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現在、約4万4000人を超える社会保険労務士の先生方の中で、開業して事務所経営をされている先生は、約2万4000人と言われれています。この開業されている社会保険労務士の先生方の事務所では、令和5年10月から始まる「消費税のインボイス制度」への対策はお済みでしょうか?
「インボイス制度」は、開業している全ての先生方に影響のある消費税の制度となりますので、これから準備を進めていかなければなりません。特に免税事業者の先生の事務所では判断と準備が必要になってきます。そこでこのサイトでは、社会保険労務士の先生方のためのインボイス対策についてまとめてみました。またセミナーの開催も予定していますので、告知されたらお早めにお申込みください。
人事・労務管理の専門家である社会保険労務士の先生方は、1号業務や2号業務をメインにされている事務所、また3号業務をメインにされている事務所、様々だと思います。それぞれのビジネスモデルを継続している中、「令和5年10月から消費税のインボイス制度が始まる」という情報が耳に入りだしたころ、新型コロナウイルスの発生により国内の多くの企業が苦境に立たされました。そんな中で多くの社会保険労務士の先生方が雇用調整助成金の申請をサポートをされたことにより、国内の多くの事業者は、雇用調整助成金を取得をすることができました。社会保険労務士の先生方の支援によって、多くの事業者がコロナ禍で救われてきました。またこれらの貢献により社会保険労務士の先生方の事務所の売上もコロナ禍で上振れされたとも言われています。
アフターコロナへと社会全体が移行する中で、雇用調整補助金の手数料収入も今後は減少していくと予測される中、令和5年10月から「消費税のインボイス制度」が始まります。
社会保険労務士の先生方の事務所では、アフターコロナで今後の経営についてのビジネスモデルを考えられているところかもしれません。
また、この数年でSmartHR等の労務手続きの電子申請が可能なクラウド型労務管理ソフト市場が本格的な普及期に入ったとも言われており、そして今後5年で多くの企業でクラウド型の労務管理ソフトの導入が増えるだろうという声も聞かれ、益々、今後の事務所経営をどのようにしていくかを日々考えられている時期かもしれません。
そんな中、消費税のインボイス制度も待ったなしで始まりますので、今からその準備も進めていきましょう。
現在、開業している社会保険労務士の先生方は、個人事務所か社会保険労務士法人のいずれかの形で経営されていると思います。原則としてこれまで「基準期間の課税売上高が、1000万円を超えている」か、または「特定期間における課税売上高が1000万円を超え、給与支払額が1000万円を超える」と消費税の課税事業者として、消費税の申告と納付の義務が課せられました。そして、上記のいずれかに該当しなければ「免税事業者」として消費税の申告義務も納付義務もありません。
消費税を納めている事務所は【課税事業者】、納めてない事務所は【免税事業者】となっていますが、それぞれ対応が違いますので、課税事業者の事務所のケースと免税事業者の事務所のケースで分けて解説をしていきます。
【課税事業者の事務所のケース】
①どんな手続きが必要?
まずは先生の事務所を「適格請求書発行事業者」として国に登録する必要があります。たまに、「うちの事務所は課税事業者だから、インボイス制度が始まっても特に何もしなくていいよね?」と言われる先生もいますが、課税事業者の事務所でも何もしなければインボイス制度が始まった際に、顧問先の経理の方から「これは適格請求書ではないですので、再発行してもらえませんか?」と問い合わせが来ることになります。必ず「適格請求書発行事業者の登録」申請を行いましょう。
②手続きするためにはどうしたら?
国税庁のホームページから「適格請求書発行事業者の登録申請書」をダウンロードして必要事項を記入の上、先生方の事務所を管轄する「インボイス登録センター」へ郵送してください。毎年、確定申告書や法人税の申告書を提出しているのは所轄税務署ですが、インボイスの登録申請については、提出先が異なりますので注意が必要です。尚、e-taxでも受付けをしていますので、紙での郵送ではなく電子申告で提出されることをお勧めします。
③手続きが完了したら?
電子申告で「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出したら、現在であれば約3週間くらいで「通知書」が届きます。そこには、先生の適格請求書発行事業者の登録番号が記載されていますので、大切に保管してください。その番号を今後、先生が発行する全ての請求書に記載することになります。
・個人の社会保険労務士事務所の場合は、T+13桁の番号
・社会保険労務士法人の場合は、T+13桁の番号(法人番号)
個人事務所の場合の13桁の番号はマイナンバーではなく、先生とは何の関係も無い番号が付与されることになります。またこれらの番号は、国税庁の公表サイトで適格請求書発行事業者かを確認できるようになっており、顧問先の経理の方が先生の事務所が「適格請求書発行事業者」かどうかこの番号で確認することができるようになっています。
④法人成りでメリットも
現在、消費税の課税事業者で個人事務所のケースでは、毎年3月に消費税の申告と納税をされていると思いますが、法人化することで、令和5年9月末までの部分については、消費税の免税事業者になれるケースがあります。消費税の免除だけで簡単に法人化を考えるべきではありませんが、トータルで法人化した方が良い先生の場合や、いずれ法人化を検討していた先生は、このタイミングで法人化することで消費税の免除を(短い期間ですが)受けることができます。実際に、当社のクライアントの社会保険労務士の先生も個人事務所から社会保険労務士法人となり、インボイス制度が始まるまで消費税の免除を受けることができています。
⑤経理業務の変化
インボイス制度は、単に請求書にT+13桁の番号を記載すれば良いと思われているかもしれませんが、経理実務も変わってきます。また令和6年1月からの「電子帳簿保存法」によって、更に経理実務が変更になってきますので注意が必要です。
【免除事業者の事務所のケース】
①課税事業者に転換するか?免税事業者を継続するか?
現在、消費税を納めていない免税事業者の先生の事務所では、令和5年10月から適格請求書発行事業者になって消費税を納める課税事業者になるか?免税事業者を継続するかの決断を迫られます。
②いつまでに決断をすれば?
原則は令和5年3月31日が適格請求書発行事業者の登録申請の期限でした。もしその期日までに登録申請を提出できない場合は、その理由を「適格請求書発行事業者の登録申請書」に記載することで認められることになっておりましたが、令和5年度税制改正大綱(令和4年12月公表)によると、「理由なく認められる」ようになるそうです。(現時点は、国会で成立していないため確定ではありません。)
それであれば「課税事業者に転換するか?免税事業者を継続するか?」ギリギリまで悩んでから決めたいと思うかもしれません。そうなると令和5年9月30日までに提出すれば良いことになりますが、「登録申請書」を提出しいてから「通知書」届くまでに現時点でも3週間かかります。今後、インボイス登録センターが混雑することが予想されていますので1か月から2ヵ月かかるかもしれません。もし適格請求書発行事業者になると決断されても、通知書が間に合わず、令和5年10月を迎えた時には、先生の事務所で発行される請求書にT+13桁の番号が記載できず、顧問先の経理の方から問い合わせがあるかもしれません。できるだけ早目に決断されることをお勧めします。
③課税事業者になったら消費税をいくら納めるの?
山田花子社会保険労務士事務所のケース 年収880万円(内消費税 80万円)
山田花子先生は、年間880万円の売上の事務所だとします。年間で消費税として80万円を形式上受取っていますが、これまで免税事業者だったので消費税については納税の必要はありませんでした。インボイス制度が始まることに合わせ、適格請求書発行事業者として登録申請をして課税事業者になった場合、この80万円を全て納めるということになるのでしょうか?そんなことはありません。消費税の計算には2つの方法がありますので、それに合わせてみていきましょう。
山田花子社会保険労務士事務所の年間売上と経費
売上 880万円(消費税 80万円)
旅費交通費 33万円(消費税 3万円)
消耗品費 44万円(消費税 4万円)
事務所家賃132万円(消費税 12万円)
その他経費 11万円(消費税 1万円)
A.原則的な計算方法(本則課税方式)
受取消費税80万円 - 支払消費税20万円
=60万円・・・消費税の納税額
B. 簡易課税制方式
受取消費税80万円 ー 40万円(※)
=40万円・・・消費税の納税額
(※簡易課税制度を選択した場合、社会保険労務士の先生の業務は、第5種(みなし仕入れ率50%)に該当しますので、80万円×50%=40万円が控除すべき消費税額となります)
原則的な計算方法であれば消費税を60万円納税することなりますが、簡易課税制度を選択した場合は納税額が40万円で済みます。のでこのケースですと20万円、納税が少なくて済みます。
簡易課税制度を選択するための適用要件や申請するタイミング、また2年間縛りがあるなどの利用する際の注意点の詳細はここでは割愛しますが、先生の事務所で受け取った消費税の全てを納付するわけではないことをご確認ください。
④課税事業者になったら、免税事業者には戻れないの?
ある社会保険労務士の先生のケースで
「令和2年と令和3年は雇用調整助成金の手数料収入で大きく、それぞれの年で売上が1000万円超えたので、令和4年と令和5年は、そもそも課税事業者として消費税を納めることになることは想定していた。
しかし令和4年は、途中から雇用調整助成金の手数料収入が減少し、年間売上は1000万円を超えなかったので、令和6年からは、本来であれば免税事業者になる。しかし今回のインボイス制度に合わせて「適格請求書発行事業者の登録申請」は行った。その場合、免税事業者の要件を満たしていても適格請求書発行事業者になったら課税事業者として消費税の納税義務があると聞いている。一度でも適格請求書発行事業者になったら、免税事業者には戻れないのだろうか?」といった質問をいただくことがあります。
適格請求書発行事業者として登録申請した後も免税事業者の要件を満たせば、免税事業者に戻ることができます。具体的な手続き等はセミナーや研修等でも説明しますが、正しく手続きをすれば可能です。ただ、顧問先の企業に対して免税事業者になったことを通知しなければなりません。そうなると相手先企業の消費税の納税負担が増えることになるので、実際にそのような対応をするかは慎重な判断が必要となります。
⑤お得な制度ができるって本当?
令和5年の税制改正により、免税事業者の方が適格請求書発行事業者になった場合、3年間だけですが消費税の納税額を抑える「2割特例」を使えることになりそうです。(令和4年12月に発表された自民党税制調査会の税制改正大綱による)。詳細は、またセミナーや研修等で解説させていただきます。
【研修講師依頼】
研修日時:2023年07月18日(火)
研修題目:士業のための「ここが変わったインボイス」と「待ったなしの電子帳簿保存法」
研修講師:服部英樹(税理士)
開催会場:日本教育会館8階(東京都千代田区一ツ橋2-6-2)
研修主催:東京司法書士会 千代田支部
【研修講師依頼】
研修日時:2022年11月08日(火)
研修題目:行政書士のための「インボイス制度とその対策」
研修講師:服部英樹(税理士)
開催会場:三多摩労務会館3階
研修主催:東京行政書士会 立川支部
【研修講師依頼】
研修日時:2022年9月15日(金)
研修題目:行政書士のための「インボイス制度とその対策」
研修講師:服部英樹(税理士)
開催形式:オンライン形式
研修主催:東京行政書士会 江東支部
【研修講師依頼】
研修日時:2022年7月15日(金)
研修題目:司法書士のための「基礎からわかるインボイス制度とその対策」
研修講師:服部英樹(税理士)
開催形式:リアル会場とオンラインのハイブリッド形式
研修主催:東京司法書士会 千代田支部
【執筆依頼】
執筆タイトル:士業の先生のための基礎からわかる「インボイス制度」(前編・後編)
書籍雑誌名:「行政ちよだ」2022.02.22号、2022.07.30号
執 筆 者:服部英樹(税理士)
執筆依頼者:東京行政書士会 千代田支部
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